結構面白かったな

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』読了

新聞記事より抜粋


十月四日早朝、鳥取県境港市、蜷山の中腹で少女のバラバラ遺体が発見された。
身元は市内に住む中学二年生、海野藻屑さん(一三)と判明した。
藻屑さんは前日の朝から行方がわからなくなっていた。
発見したのは同じ中学に通う友人、A子さん(一三)で、警察では犯人、犯行動機を調べるとともに、
A子さんが遺体発見現場である蜷山に行った理由についても詳しく聞いている……。


冒頭、この1ページから物語は始まる
主人公は山田なぎさ
片田舎に暮らし、早く卒業し、社会に出たいと思っているリアリスト
パートアルバイトの母、引き篭もりの兄と共に暮らしながら、何の力も持たない十三歳という自分の年齢に苛立ちを抱える少女
そんななぎさのクラスに、一人の転校生がやってくる
海野藻屑
自分のことを人魚と言い張る少女
嘘ばかりを繰り返し、あっという間にクラスで孤立した藻屑
この二人の少女が過ごした、夏の終わりの一ヶ月間の物語


なぎさが欲しがっている『実弾』は現金
直接的な影響力を持ち、何かを変えることのできる力
藻屑が乱射している『砂糖菓子の弾丸』は夢、あるいは願望、希望
直接的な影響力を持たず、何を変えることもできない、ただ甘いだけの飴玉


二人ともに何かを願い、何かを変えたいと思っていながら、まだ十三歳の彼女たちは何の力も持たず
物語は変えようのない結末、冒頭の新聞記事へと収束していく
この辺りの演出は良いね
最初に新聞記事を見せてしまうことで、なぎさの抱えている焦燥や無力感に共感しやすい


「『隣の家の少女』みたいな感じ?」


さすがにあれよりは面白い
あれは、鬱々としているだけの話が多くて、さして面白いとも思わなかった
こっちは小説としても結構面白いと思う
結末は分かっていても、次の展開に期待させるような面白さは充分あった
好きだった話は、左耳の話と、山に行こうとするシーンかな
友彦はラストで一気に株を上げたな


ちなみに、萌え要素皆無
燃え要素も皆無
ただ、可哀想な話だった
結構好き


で、これ、買ったはいいが、読み返すのかどうか
もう一回くらいは読んでもいいかな