何故だろう

忙しい筈なのに、目の前には読み終えた『クドリャフカの順番』が
面白かった!
やはり米澤穂信古典部シリーズが一番好きだ


今作で特筆すべきはその形式
これまではホータローの一人称視点で書かれていたのに対し、古典部メンバーそれぞれの視点から書かれている
里志と伊原の関係とか、メンバー各人から見たホータローとかは新鮮で面白かった
今回で特に良かったのは伊原かな
漫研に入った理由とか、その部活内での微妙な立ち位置とか
これまでとはまた違った一面が見れたのは良かったな
同人誌即売会の常連というのは凄く驚いた、素で




あと、僕の大好きな入須先輩が結構出番あったので嬉しかった
“女帝”入須冬実
彼女の周囲の人間は、彼女の意図のままに動いてしまう、というプランナーみたいな高校生なのだけれど
入須の『物の頼み方講座』は素晴らしかった
曰く、


物を頼むという行為は、見返りのある頼みごと、見返りのない頼みごとに分けられる
見返りのある頼みごとの場合、相手は十中八九ぼったくりを考える
考えなかったとしても、必ず自分の労力を最小にしようとする
故に、見返りのある頼みごとの際は、相手が頼んだだけの仕事をしてくれると思わず、日程と作業量に充分な余裕を持たせなければならない
相手が動かなかった場合のことも考え、予備の計画も用意しておく必要がある
それが嫌なら、相手にもリスクを負わせろ


と、まあこの辺は序の口
以下、見返りのない頼みごとに関する下りが素晴らしいので引用

その場合、相手を動かすのは精神的満足感だ。
物質的満足を得るための行為で手を抜くことはあっても、精神的満足を得るための行為で手を抜くことはない。
『カリスマ性』『伝統性』を使えれば最高なんだが、これは使いたいと思って使えるものではない。
『信仰』『愛』も強力だというが、下準備に充分な時間が必要になる。
(中略)
できれば『正義感』『使命感』や『プロ意識』『自尊心』を使いたいが、これも中級以上だろうな。
コツがわかると、この辺りは汎用性があるんだが。


で、最後に、初歩の技術として『期待』を挙げる

相手に『自分に頼る他にこいつには方法がない』と思わせることだ。
自分は唯一無二の期待をかけられている、と感じた人間は、実に簡単に尽くしてくれる。
自己犠牲さえ厭わないことも、珍しくない。
相手に期待するんだ。ふりだけでいい。
加えて、一つ注意することがある。問題をあまり大きく見せてはいけない。
『自分が助けると、こいつは絶体絶命のピンチを脱出する』と思わせては駄目だ。
自分のちょっとした手助けで他人が莫大な利益を得たり致命的な不利益を回避したりすることを快く思う人間は、多くはない。
自分には些細なことだが相手にはそこそこ大事なことらしいな、というラインで攻めるのが重要だ。
優越感をくすぐれる。


素晴らしい
目から鱗
読みながら物凄く関心してしまった



いつものような落ち込まないくらいのさっぱりとした暗さもあったね
キーワードは期待か
里志がホータローに対して表現する『期待』とはどんなものなのか、とか
うん、面白かった
古典部シリーズがこれで終わってしまうのだったら残念でならない


「それ、どこで読んだ話?」


作者本人のサイト
うろ覚えだから本当にそうなのかどうかはちょっと自信ないかな
今すぐ調べようとも思わないし