花ちらす 風のやどりは たれか知る 我に教へよ 行きてうらみむ

理由などない、ただそう決まっているからだ、と結ぶわけだが
刃鳴散らす』終わった
二人の剣鬼が殺し合う
それだけの話だった
面白かった面白かった
んー……、散漫になりそうなので順番に書くか


・文章
素晴らしい
殆どの戦いが一太刀で決着がつくのだけれど、その一太刀の描写が尋常じゃない
戦いとは、先の先、先、後の先の三種の機の読み合いである、という徹底した理詰めの戦闘
僅か一太刀の中での読み合い、思考、描写、その結果としての死がこれでもかというくらい濃密に詰め込まれた文章は読み応えがある
また、ライターが剣術流派の師範という話を2chで見たのだけれど、それを納得させるくらいに散りばめられた剣術についての薀蓄も相当のもの
文句なし


・舞台
面白いね
着流し姿の剣客が街を往来する現代の東京
ただ、舞台が活かしきれているか、というと勿体無さは感じる
鬼哭街のサイバネティック技術みたいな、現代東京ならではのガジェットが見当たらない
というか、街に付随する設定でクローズアップされているのが瀧川商事と矛止の会くらいしかないのが勿体無いね
結果、弓のスーツ姿とかシャツの上から小袖を羽織った赤音みたいな、ビジュアルイメージ面での利用ばかりが目立つ


・物語
武田赤音と伊烏義阿
この二人が殺し合うそれだけの話
この物語において、彼ら以外の登場人物はその決着に向けての過程でしかなく、オープニングからエンディングまで、彼ら二人は互いの決着を付ける為だけに走り続ける
ので、脇役どもは実にぞんざいな扱いを受ける
弓の扱いの悪さとか、一輪の影の薄さとか
主軸は二人の戦いでいいから、その外堀としてもっと彼女らについて掘り下げて欲しかった
そんな中、笙に関しての話は良かった
真相をぼかしたままっていう終わり方は綺麗だ
最後の終わり方は満足
が、あれだ
二周目いらねえ
蛇足に過ぎる
短い作品だから遊びを入れても良い、みたいな考えだったら萎える


・人物
メインの主人公は赤音かな、一応
鬼哭街とは逆で、復讐される側がメイン
赤音をただのわがまま小僧と見る向きもあるが、個人的にはただ一つ残った妄執の為だけに生きる業が感じられて良かったと思う
伊烏も同様
復讐の為に斬った数を数えながら、赤音への復讐のみを望む剣鬼
で、その他については上で述べたまま
あと、強い剣客をもっと出して欲しかった
強いというか、密度の高い戦闘シーンが三つ程しかないのが勿体無い
渡の死に様は好き



この舞台、というかこのライターの書く剣客物をもっと読みたい
や、本当に面白かった
これだけ戦闘シーンで盛り上げてくれるとは思わなかったね